IT人材の不足が社会的な課題となっている昨今、エンジニアの採用に苦労している企業は多くなっています。特に小規模事業者を中心に人材のミスマッチに直面している企業は多く、適切な対応が求められます。
本章ではまず、ミスマッチが発生する原因について見ていきます。
なお、エンジニア採用の難易度が高まる中で実施すべき採用活動の流れについては、以下の記事でご紹介しています。
▶ 「エンジニア採用は難しい!」を脱却するためには|採用がうまくいかない理由と成功させる方法
1つ目は、自社が求めているエンジニアのスキルや人物像を整理できておらず、採用基準が不明確であることです。採用基準が不明確なために、書類選考時に自社にマッチする人材を見分けられず、ミスマッチが発生しているケースです。そのような状態に陥ってしまう根本的な原因としては、社内のエンジニア部門を採用活動に巻き込めておらず、社内のエンジニアが何を求めているのか把握できていないことが挙げられます。
また、エンジニアの職務経歴書は専門用語が多く、エンジニアとしての知識や経験が乏しいメンバーのみでは、経歴書の見るべきポイントがわからず、ミスマッチの原因となっているケースもあります。
2つ目は、コミュニケーション不足によって面接時に採用担当者と求職者との間で相互理解が不十分であることです。
数回の面接だけで会社の雰囲気や人間関係など可視化しにくい要素を伝えることは容易ではありません。採用担当者は応募者のスキルや実績のみ、また求職者は会社の労働条件のみを意識していると、価値観や人間関係などの面を十分に把握できず、ミスマッチが発生するリスクが高まります。
3つ目は情報開示が不十分であることです。会社側は一般的にポジティブな内容ばかりを記載しがちですが、その場合、求職者に過度な期待を抱かせてしまい、入社後にギャップを感じやすくなります。また、採用担当者の現場に関する知識の不足により、本当に必要な条件を記載できておらず、応募してきた求職者のスキルや実績と自社の求める要件が合わないケースもよくあります。
加えて、自社で働くことで「エンジニア個人がどう成長できるか」というキャリアに関する情報も開示することも重要です。
入社後のフォローが不十分なこともミスマッチの原因です。実績豊富なエンジニアであっても、新たな環境に慣れるまでには時間がかかり、人間関係や価値観などの面で悩むことはあります。
そうしたときに適切なフォローを行えば不安やストレスを緩和できますが、フォローが不十分だとストレスを抱えたまま勤務することになり、早期離職する可能性が高まってしまいます。
では、実際に採用のミスマッチが生じた場合どのような損失があるのでしょうか。以下では、経済的ダメージ、社内のモチベーション低下、会社のイメージ悪化の3つをご紹介します。
ミスマッチが原因で採用した人材が会社の利益に貢献する前に早期離職してしまうと、採用にかけたコストが無駄になります。
マイナビの調査によると、2021年の中途採用コスト実績(IT・通信・インターネット)は約574万円であり、1人あたりの採用コストを算出すると約35万円です。これに加えて給与・社会保険料、PCなどの設備費、教育コストなどの費用が経済的損失となって会社の経営を圧迫します。
出典:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2022年版(2021年実績)」 ※平均採用実績(574.4万円)÷平均採用者数(16.4人)として算出
社員がすぐに辞めてしまうと既存社員の業務負担が増加したり、人間関係の構築に支障を来したりするため、社内のモチベーション低下につながります。
また、離職率が高い職場はノウハウが蓄積されず、生産性向上を阻む要因にもなってしまいます。
離職率が高いことは一般的に好ましいことではありません。離職率の高さが求職者の間で知れ渡ると、「ブラック企業」というレッテルを貼られる可能性があります。
また、ネガティブな理由で離職した方が転職サイト・掲示板などに悪い内容を書き込んでしまうと、社会的なイメージが低下して将来的な応募者の減少にもつながりかねません。
前章でご紹介したような損失を避けるため、ミスマッチを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。 以下では、ミスマッチを防ぐための5つのポイントをご紹介します。
先述したように、採用担当者にIT業界の知識が不足していたり、現場の業務内容を把握していなかったりすると、現場が求めるスキルや要件に合わない人材を採用してしまう可能性が高くなってしまいます。
現場のエンジニアと採用担当者が密にコミュニケーションをとり、求められる能力やスキル、業務内容を詳細に把握することが重要です。
1つ目のポイントと関連して、現場とコミュニケーションをとる中で現場が求めるスキル・経験を明確化する必要もあります。たとえば、「○○の経験を○年以上」「○○を用いたシステム開発経験」といった具体的な経験やスキルを要件として掲げることで、応募段階でミスマッチをある程度防ぐことができます。
先述のように、求職者に対してポジティブな情報しか伝えていない場合、入社後にギャップを感じやすくなります。ネガティブな情報も伝えることで入社後にギャップが生じるのを防ぎ、さらに「マイナスの内容も包み隠さず伝えてくれるこの企業は信頼できそうだ」と求職者に思ってもらえる効果も期待できます。
採用担当者と現場が密に連携していても、実際の採用活動に現場のエンジニアが参加していないと、どうしても細かいスキルなどの要件でミスマッチが生じる可能性があります。
そこで、現場をよく知るエンジニアが採用活動に関わることで、より専門的・技術的な要件や人物像などを詳しく把握でき、ミスマッチの最小化につながります。
入社後のギャップが小さかったとしても、新たな環境での勤務は少なからずストレスがかかります。そのため、いち早く新たな環境に慣れることができるような体制を整備することが重要です。
例えば、研修やフォローアップ制度を充実させたり、チームのメンバーや上司ときめ細かなコミュニケーションをとれる機会を設けたりすることなどが挙げられます。
前章でご紹介したポイントを押さえていても、ミスマッチを完全にゼロにすることはなかなかできません。そこで重要になるのが、ミスマッチが発生した場合の対処法です。主な対策として以下3つがあります。
まず、やるべきことはミスマッチの原因究明です。
なぜミスマッチが起きたのか採用担当者や責任者にあたる上司、また採用に関わった現場のエンジニアなどにヒアリングし、課題を洗い出します。課題を踏まえ、今後の採用活動に生かせるよう採用の過程や改善点などをドキュメントとして残しておくことも重要です。
応募要件として掲げている人物像が現場の求めるものと異なる可能性もあるため、現場の意見も聞きながら練り直していきます。優秀な人材は好条件の求人に集まるため、求めるスキルや経験に見合った年収を提示したり、労働条件の改善に取り組んだりする必要もあります。
以上のような取り組みを行ってもミスマッチが改善されない場合、採用方法や採用フローそのものに課題があるかもしれません。特に、中小企業やベンチャーなどは採用や育成にかけることができるリソース・コストが少なく、採用のノウハウが蓄積されていない企業が多いため、適切な採用フローを構築できていないことも考えられます。こうした場合は採用方法を考え直す必要があります。
そこで以下では、ミスマッチを防ぐための1つの方法である「採用コンサルティング」についてご紹介します。
採用コンサルティングとは、企業が抱える採用活動の課題解決を支援するサービスのことです。エンジニア採用のノウハウを持っているプロ集団に採用コンサルティングを依頼することで、現状の課題を踏まえた施策の提案、採用基準の策定、人物像・求人情報の打ち出し方など「採用戦略」からトータルでサポートを受けられます。
スキル判断の難しい書類選考をプロに任せることで書類選考時のミスマッチが起きにくくなるほか、最新のIT業界事情や独自のロジックをもとにした質の高いスカウトメール作成などにより、優秀なエンジニアの採用に貢献します。